天テン　　才サイ
	かれこれ３０年以上テニスをやってきて、いろいろな体験、感じたことがあるので書いて
	みようと思う。
	「天才」−自分の周りにはいないよ。でも、じつはかなり「いる」のです。それは各分野
	にいる。ある人は、社交の天才。初対面の人でも気むずかしい人にでもまるで気にせず、普
	通にしゃべれる。２分後にはもう冗談も飛びだして盛り上がっている。本人に聞くと、「い
	や別に。そのまましゃべっているだけだし。特に何もしてないよ。」といったような脳天気
	な返事が返ってくる。これはその後の彼カレの行動を見てもどうも本当らしい。
	テニスにも「天才」はいます。例えばウチの職場のＹ．Ａ。１年に１，２回しかテニスを
	しないのにポーチが抜群に上手い。では、学生時代や社会人のある時期にテニスにはまった
	ことがあるか−と言えば、それも特にはない。いったい、いつポーチなど上級の技を会得し
	たのか、テニススクールにはもちろん行ったことはなく、どうもほかのコートの人のプレー
	を見てまねして憶えららしい。ほかにはフォアが上手く、実は彼が球に振り遅れるのをまだ
	見たことがない。
	別の人は県東部のシード選手Ｙさん。学生時代は名選手でならしたようだが、ここ１０年
	はやはり年に１，２回しか練習をしない。しかし、強豪の揃う東部のＡクラスの大会でも常
	に上位に名を連ねる。いったいどういった戦い方をするのかというと、１，２回戦はウォー
	ムアップで適当につなぐだけ。そのうちに昔のプレーを思い出してきて３回戦目からエンジ
	ンがかかるらしい。
	具体的な人を挙げるとすれば、ジョンマッケンロー。彼ほど自由奔放、好き勝手にプレー
	した選手はいない。およそ、基本からはかけ離れたフォーム。脇は空いているわ、膝は伸び
	ている、手首を使ってインパクトの瞬間にコースを変える。バックハンドのグリップでフォ
	アを打つこともある。ガットのテンションが３８ポンドという点から見てもいかに普通のプ
	レーヤーとは違うんだなとわかる。
	このような人達はおよそ基本だの大変な基礎練習だのはいらない、むしろ煩わしいらしい。
	なぜ膝を落として腰を低くする様な「かったるいこと」しているのか。およそ理解できない
	ね、をといった上目遣い的な意識を持っていながらも公式試合の結果をみるとどんどんと勝
	ち上がり、有名になるほどの成績をおさめている。いったい基本フォームって何なの？意味
	があるのか？　大変な基本を体に覚え込ませようとしいる我々がまるでバカみたい−と思わ
	せてしまう人達である。
	ところが、この様な人達のプレーを我々がまねてみても同じようなボールが打てない。か
	つてマッケンローのサーブをまねて打ってみたことがあるが、彼のような切れはまるで出デず、
	試合ではまったく使い物にならなかった。
	が、このような天才達、それに準ずる秀才達にも弱点はある。それは人に教えられない、
	一般の人にコーチが出来ないという点だ。ボールに振り遅れたことがなく、ガットの芯にも
	よく当たる。何も考えず自然にプレーして、勝負強さ１本でＡクラスのベスト８に入れる人
	達が社会人になり、しばしば民間クラブのコーチに就任している。そうゆう人達が「コーチ、
	私振り遅れるし、芯にもなかなか当たらないんです。」と凡才の生徒に言われても、そんな
	経験がそもそもないのだから答えに窮してしまう。そこで、コーチの教則本を見ることにな
	るのだが、その本を書いた著者がそもそも才能のある人の場合が多いので、「振り遅れるの
	は（おそらく）ラケットを引くのが遅いから（だろう）」と書いてあるので、「ラケットは
	早く引くように。」とコーチしている。プロ野球を見ても、名ピッチングコーチとして腕利
	きの人は現役時代は球速がなく、大変な苦労をして独自のピッチング術を会得した「超ベテラ
	ン技巧派」と呼ばれていた人が多い。
	が、そもそもそのような才のある人達をうらやましがっても、自分達は実は別の分野に才
	能があるのかもしれないし、一方では、テニスどころではなく、７才で白血病にかかり、と
	ても行きたかった小学校にもろくに行けず、わずか２３才で力尽き、この世を去らざるを得
	なかった「苦しむために生まれてきたのでは。」とでも言いたいくらいの気の毒な女の子も
	いたわけで、テニスが出来るだけで、一応健康で生きてゆける凡才くらいで−が実はかなり
	幸運であり,実は恵まれている−のが本当のところではないでしょうか。
									−ジカイ次回ツヅへ続く
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